丹波篠山黒枝豆 まにあわない製品化のままならない現実
こんにちは。ささやま寺子屋塾の池です。
実は農学部出身です。
今回は、私が活動している丹波篠山市の特産品についての話です。
10月に旬を迎える丹波篠山の黒枝豆
丹波篠山の名物と言えば、なんといっても黒枝豆です。
普通の枝豆と比べて色が黒っぽく、粒が大きく、甘みや旨味が強いことが特徴です。
その旬は大変短く、毎年10月中しか収穫できないため「幻の味」とも呼ばれています。
期間限定でしか食べられない高級品として、関西を中心に大変な人気があります。
黒枝豆には「枝売り」と「さや売り」の2種類の商品形態があります。
枝売り
枝付きの枝豆を束にして販売しています。古くから用いられてきた商品形態で、「黒枝豆と言えばコレ!」という方も多いのではないでしょうか。自分で枝から外さないといけない分、少し手間はかかりますが、枝付きのため日持ちがするというメリットもあります。
さや売り
近年になって増えてきている商品形態です。枝豆のさやを枝から外して、袋詰めして販売しています。黒枝豆以外の枝豆では馴染みある形だと思いますが、黒枝豆は枝売りが主流でした。
黒枝豆のブランドイメージを担ってきたのは枝売りの豆です。なんといっても枝付きの高級感は魅力的で、自分で食べるだけでなく贈答品として大変人気があります。
さや売りに比べて製品化に圧倒的な手間と時間がかかるのですが、高級品としてのブランドイメージを守るため、現在でもあえて枝売りを続けている農家が大半を占めています。
ブランドを守るための選別作業が農家の負担に
黒枝豆は丹波篠山市の主要産業と言って良いでしょう。そのブランドを守るため、丹波篠山の農家は地域一体となって高い品質を保つ努力をしています。
枝売りの製品化では、虫食いや汚れのあるさやは、あらかじめ取り除いています。
さや売りを採用している農家も、見た目の悪いさやが流通しないよう、人の手による厳しい選別作業を行っています。
しかし、こうした選別作業は農家にとって大きな負担となっています。
毎年、10月になると丹波篠山市の黒枝豆農家のもとには親戚一同やパートの主婦が集まり、朝から晩まで休むことなく、人海戦術で製品化を進めています。
しかし、経験と責任が求められる選別作業は、中心となる農家本人にしかできない仕事です。この選別作業が大きな足かせとなって、なかなか生産量を増やすことができていません。
黒枝豆は人気なので、作れば作るだけ売れることは分かっているのですが、生産が追い付いておらず、「需要はあるのに供給されない」という状態なのです。
選別がいらない「第三」の商品形態
こうした状況の打開策となりうる、第三の商品形態があります。観光客を対象とした「収穫体験」です。
収穫体験。
畑に育っている黒枝豆に「1株400円」のようにお得な値段をつけ、お客さんに自分で収穫してもらう方法です。
費用対効果を考えた時、恐らくこの方法が最良であると考えられます。収穫体験なら、お客さんが自分で枝豆のさやをもぎ取って袋に入れて帰るため、農家は選別作業どころか黒枝豆に触れる必要すらありません。もし虫食いの豆が入っていたとしても、それはもぎ取って袋に入れたお客さんの自己責任です。
このように画期的な収穫体験ですが、問題もあります。
お客さんが収穫体験に来るのは、それまで積み上げてきたブランドイメージあってのもの。全ての農家が通常の製品化を完全にやめて、収穫体験にしぼってしまったら、ブランドイメージは消滅するでしょう。
そもそも、収穫体験だけでは多くの人に届けることが出来ません。
本当は誰も選別などしなくない。でも、誰かがブランドを守らなければならない。このジレンマに悩みながら、篠山の農家は黒枝豆を生産しているのです。
いかがでしたか。
今回は、日ごろから心を痛めている生産者と消費者のギャップについて知ってほしくて、書きました。
はっきり言って、多少さやに虫食いがあっても、中身の豆は無事であることがほとんどです。味は一切変わりません。それでも丹波篠山市の農家たちはブランドを守るため、いわば「何の意味もない」選別作業を行って、やたら粒ぞろいできれいな見た目の黒枝豆を生産しています。
黒枝豆に限らず、ブランド志向の農作物の裏にはこのような農家の苦労があります。
だから、消費者の皆さん。
旅行してください。
収穫体験をしてください。
お待ちしています!
こんかいも呼んで下さり、ありがとうございました。
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